どんな場所にも潜む熱中症の可能性
熱中症は、必ずしも猛暑の日だけ起こるわけではありません。
体が暑さに慣れていない初夏の急に暑くなった日や気温は高くなくても湿度が高い日、さらには残暑の時期まで注意が必要です。
また室内でも起こることがあるので、屋内施設でも油断できません。
熱中症とは
高温多湿な環境に長くいることで、徐々に体内の水分や塩分のバランスが崩れ、体温調節機能がうまく働かなくなり、体内に熱がこもってしまうことによって起こる健康障害の総称(厚生労働省HP)
のことを言います。
屋外だけでなく、屋内でも熱中症になる可能性があります。
開放的になっている屋内バーベキュー施設の場合、屋内でも日当たりが強いこともあるため、どんな場所でも対策しておくのが賢明です。
どんな人が熱中症になりやすい?
普段は汗をかいたり、皮膚の血管を広げたりして体温を下げていますが、この仕組みがうまく働かなくなるのが熱中症です。
熱中症になりやすい人がいるので、以下の人はとくに気をつけるようにしましょう。
子ども:子どもは大人に比べて体温が高め。また、背が低いので地面の熱の影響を受けやすいため注意が必要。また、体温調節機能がまだ未熟なうえ、自分で「暑い」と言えなかったり、自分から水分補給を積極的にしない場合も。一緒にいる大人が定期的に水分補給するよう声がけをしてあげましょう。
女性: 一般的に、女性は男性より体の水分量が少ないです。男性の体液量が体重の約60%なのに対し、女性は約55%。熱中症のリスクという点では大きな違いです。
肥満の人: 体重が多いと、体を冷やすのに余分なエネルギーが必要になります。また、脂肪層が厚いと熱が逃げにくくなるので、熱中症のリスクが高くなります。
高齢者: 年を取ると、体の水分量が少なくなります。若い人の体液量が体重の約60%なのに対し、高齢者は約50%しかありません。また、暑さを感じにくくなったり、のどの渇きを感じにくくなります。さらに、汗をかく機能や熱を逃がす機能も低下しているので、体温が上がりやすくなっています。
でも、これ以外の人でも油断は禁物。体調やお酒を飲むなどの状況によっては、普段問題ない人も熱中症になりかねません。
こんなときも注意しよう
・急に暑くなった日→体が暑さに慣れていない
・熱波のような極端に暑い日が続いたとき
・湿度が高い日→汗が蒸発しにくい
・風が弱い日→体の周りの熱がこもりやすい
・閉め切った室内や車内にいる
・お酒を飲んだ後→アルコールには利尿作用があり、脱水を招きやすい
現場での対応はもちろん、事前にバーベキューを行う場所や時間帯も選ぶ
重症になると、入院が必要になる場合も。できるだけ熱中症にならないための予防策を知っておきましょう
事前にできること
バーベキューをする時間帯を選ぶ
昼間の時間帯よりは夜の方が気温が下がります。しかし、盛夏では夜になっても30度を超える気温でかなり汗をいてしまう場合もあるので注意。
場所を選ぶ
昼間なら屋内会場や、会場にミストシャワーなど熱中症対策しているところ。屋外でも屋根付きの施設やテントや木陰で日差しを遮ることができるところを選んで、長時間の炎天下や高温多湿な場所にいることを避けます。
屋根のない屋外施設を使用する場合は、タープを持参して日陰を作るようにしましょう。
暑さ指数(WBGT)をチェック
暑さ指数となるWBGT(Wet Bulb Globe Temperature) は、気温だけでなく湿度や日差しの強さなども考慮した指標。
環境省や気象庁のサイトで確認できます。 28℃を超えると熱中症の危険が高まります。31℃以上では危険な状態なので、外出や運動は控えめにしましょう。
現地でできる対策
水分補給
対策の基本は水分補給です。熱中症は体内の水分だけでなく、塩分のバランスが崩れて起こります。
水だけでなく、電解質が入っているドリンクなどをこまめに摂り、対策します。喉の渇きを感じる前に、少しずつ補給するよう心がけます。
スポーツドリンクでもアミノ酸入りはNG。 詳しくしくは下記に記載しています。
クールアイテムを活用する
首周りを冷やす、ハンディタイプの扇風機を活用するなど体温を下げるアイテムを活用します。
クールスプレーやハッカ油など服や肌につけることで、スーッとして体感温度を下げるアイテムもありますが、実際の体温を下げているわけでないので、水分補給など他の対策を忘れずに。
こうなったら要注意?「めまい」や「だるさ」に気をつけて
どんな症状が熱中症の兆候なのかを知っておくことで、体の違和感に早期に気づけるかもしれません。
自分はもちろん、一緒に過ごす友人や家族がこんな症状になっていないか確認し合いましょう。
症状 | 対処 | |
軽度 | ・めまいや立ちくらみ ・やたらと生あくびが出る ・汗が止まらない ・筋肉痛や足がつる ・体がだるい、疲れやすい ・頭痛 ・吐き気 | すぐに涼しい場所に移動し、水分補給を。軽度のうちに対処すれば、自力での回復が可能。 |
中度 | ・頭痛がひどくなる ・吐き気が強くなり、おう吐することも ・体がだるく、横になりたくなる ・判断力や集中力が低下する ・体温が高くなる(38~40度くらい) ・皮膚が赤くなり、触るととても熱い ・呼吸や脈が速くなる | 自力での回復は難しい。すぐに体を冷やし、水分補給を。症状が改善しない場合は、医療機関を受診。 |
重度 | ・意識がもうろうとする、または失う ・けいれんを起こす ・まっすぐ歩けない、走れない ・体温が40度以上に上昇 ・皮膚が赤く、熱く、乾いている(汗が出なくなる) ・呼びかけへの反応が鈍い、まともな会話ができない | 重度の症状になる前に医療機関で診てもらうか、救急車を呼ぶなど早急に対応する。 |
軽度の症状になる前に気を配っておきたいこと
熱中症は誰にでも起こりうることですが、とくに小さい子どもや野外活動に慣れていない人がいるときは、上記の「軽度症状」の前に見られる兆候について、見守っておくと安心。
例えば、以下のような点がないか気を配っておきましょう。
・あまり水分を取っていない
・顔が赤い(のぼせている様子)
・アルコールは飲んでいるがソフトドリンクは飲んでいない
・急にしゃべらなくなる
・会話の反応が薄い、生返事
バーベキューで盛り上がっていると、なかなか「反応が薄い」ことに気づきにくいので、定期的に周囲に注意を配ることが必要です。
熱中症になってしまったら
熱中症になってしまったときの対処法を事前に頭に入れておきましょう。
熱中症の対処法
涼しい場所に移動する: まずは、直射日光を避け、風通しの良い日陰や冷房の効いた室内に移動します。体温を下げることが最優先。
衣服を緩めて、体を冷やす: 襟元やベルトを緩め、体から熱が逃げやすいようにします。首の周り、脇の下、足の付け根など、太い血管が通っている部分を重点的に冷やします。
氷や冷たいタオルを当てたり、ハンディファンやうちわで風を当てて体温をできるだけ下げます。
水分・塩分を補給する: スポーツドリンクがおすすめです。体温を測る: 可能であれば体温を測りましょう。40度以上の高熱がある場合は重症の可能性が高いので、すぐに医療機関を受診する必要があります。
様子を見守る: 意識がはっきりしていて、水分補給ができる場合は、涼しい場所で横になって休ませ、様子を見守ります。症状が改善しない場合は、医療機関を受診してください。
ただし、以下の場合は迷わず救急車を呼びましょう
・意識がはっきりしない(呼びかけに対する反応が鈍い、まともに会話ができない)
・体温が高くて、触るととても熱い(体温計で40度以上)
・言動がおかしい、まともに会話ができない
・けいれんを起こしている
・吐き気が強く、吐き続けている
・重度の頭痛がある
・水分摂取ができない、吐き気が続く
・症状が1時間以上改善しない
・高齢者や持病のある人の場合
・過去に熱中症になったことがある
救急車を待つ間も、できる範囲で体を冷やし続けることが大切です。
アミノ酸入りは逆効果?水分補給はなんでもいいわけではない
体の水分や塩分のバランスが崩れているので、経口補水液での水分補給が理想です。
真水は避けたほうがいいのですが、真水しかなければ、最初の500mlはできるだけ一気に飲みます。その後はちびちびと飲んで、30分で500mlを目安にします。
その間に売店などで経口補水液を手に入れるようにしましょう。
常温で飲むのがおすすめですが、熱中症で体温が上昇しているときは冷たくてもOKです。
スポーツドリンクがおすすめされていますが、アミノ酸補給のものは避けるようにしてください。アミノ酸は体温を上げる作用があるためです(牛乳もNG)。
いざというときのために、熱中症対策の知識はもっておこう
近年は暑い時期が長くなり、より暑さが厳しくなっています。いつ熱中症になってもおかしくない環境です。
とはいえ、夏休みなど暑い時期にバーベキューの機会が多いものです。
自分だけではなく同行者にも気を配って熱中症対策をしつつ、バーベキューを楽しみましょう!